東京地方裁判所 昭和24年(ヨ)3313号 決定
申請人 中本静 外二十名
被申請人 富士産業株式会社
一、保証 無保証
二、主 文
(一) 被申請人が、昭和二十四年十一月五日附を以て、申請人A、同B、同C、同E、同F、同G、同H、同J、同K、同M、同N、同Q、同Tに対してなした同月十二日限り解雇する旨の意思表示は、その効力を停止する。
(二) 申請人D、同I、同L、同O、同P、同R、同S、同Uの本件申請は、これを却下する。
三、理 由
第一、申立の趣旨
申請人等は、「被申請人が昭和二十四年十一月五日申請人等に対してなした同月十二日限り解雇する旨の意思表示は、その効力を停止する。」との決定を求め、
被申請人等は、「申請人等の本件申請は、いずれもこれを却下する。」との決定を求めた。
第二、爭のない事実
(一)、申請人等は、別表「(入社年月日)」欄記載の日、被申請人会社に雇入れられ、発動機、映写機、ミシン等の製造を行つている同会社荻窪工場において、それぞれ別表「職場、職種」欄記載のとおり、勤務しており、また右工場の従業員を以て組織せられている「日本労働組合総同盟金属労働組合同盟関東金属労働組合富士産業荻窪支部」(以下「組合」と略称)の役員ないし組合員であつた。
(二) しかるに被申請人会社は、荻窪工場の経営状態の悪化を防止し、工場の再建を図るためには、人員整理を行うよりほかはない、という觀点に立つて、従来の従業員七百四十二名を約五百三十名に減縮する案をたて、昭和二十四年十月二十九日右再建案を「組合」に提示したが、「組合」はこれに反対して、その撤囘を要求したので、被申請人会社は交渉を打切り、同年十一月五日附を以て、申請人等を含む百八十九名の従業員に対し、同月十二日限り解雇する旨の意思表示をなした。
(三) 而して「組合」は、昭和二十一年四月十八日、被申請人会社とのあいだに、存続期間の定めのない労働協約を締結したが、その中には、「採用解雇、人事任免は組合の承認のもとに行うこと」という条項がある。
第三、申請人等の主張
(一) 「組合」と被申請人会社とのあいだの労働協約については解約の申入がなされておらず、又破棄の合意も成立していない。従つて右協約は、現に有効に存続しているにもかかわらず、被申請人会社は、本件解雇につき、「組合」の承認を得ていないから、右解雇は無効である。
(二) 加うるに、被申請人会社は、前記解雇につき、解雇基準を設けているが、申請人等はいずれもこれに該当していない。しかるに、これを敢えて解雇したのは、申請人等がいずれも「組合」の役員または積極的分子として組合活動をしていたので人員整理に名を藉り、申請人等を排除して組合の弱体化を図ろうとする意思のもとになされたのである。すなわち、申請人等に対する本件解雇は、不当労働行為として無効である。
(三) 申請人等が、解雇予告手当を受領したのは賃金の一部としてこれを受領したのであつて、解雇を承認したものではない。
(四) 前記「組合」が申請人等を除名する旨の決議をなしたことは認めるが、その決議は組合規約に違反し三分の二以上の多数決を以てなされたものではないから無効である。従つて除名を理由に懲戒解雇されるいわれはない。
第四、被申請人の主張
(一) 旧労働組合法第二十条の趣旨にのつとり、存続期間の定めのない労働協約は、三年を超えて有効に存続することができないと解すべきであり、従つて、本件協約は前記締結の日から三年を経過した昭和二十四年四月十八日限り失効したことになる。而して、このことは、被申請人会社及び「組合」共にこれを承認していたのであるから、被申請人会社において、申請人等の解雇に付き「組合」の承認を求める義務はない。
(二) 本件人員整理は、会社の経営合理化上、真にやむを得ず、これを行つたものであり、被申請人会社は、右整理については昭和二十四年十月二十八日定めた整理基準(別項)に基き、各従業員の考課表を比較検討し、厳正に被解雇者を決定したのであるが、被申請人等は、いずれも、考課表上低位にあつて、右整理基準に該当しているので、これを解雇したわけである。すなわち、申請人等の整理基準該当項目並びに職場における序列は、別表「解雇事由」「該当項目(序列)」欄記載のとおりであり、解雇事由の主な内容は同表に記載したとおりである。殊に申請人中、A、B、C、D、G、H、J、L、M、P、Tの十一名は、同表記載のように、昭和二十四年二月から八月までの間に組合活動の範囲を逸脱して工場内の秩序を著しく紊す行為をなし、懲戒解雇にも該当すべきものであるから、本件整理に際し、解雇されるのは当然である。(荻窪工場は賠償工場であるから、工場秩序維持のため万全の措置がとられなければならないのであつて、「工場秩序を紊す。」ということは、最も重要視せらるべき整理基準の一である。)
解雇基準
(1) 技術低位なる者。
(2) 職務怠慢なる者。
(3) 工場秩序を紊す者。
(4) 会社業務に協力せざるもの。
(5) 事故欠勤多き者。
(6) 出勤常ならざる者。
(7) 病気による長期欠勤者。
(8) 配置転換の困難な者。
(9) 業務縮小の為適当の配置なきに至りたる者。
(10) 其の他経営効率に寄与する程度の低い者。
(三) このように、被申請人会社は、申請人等が整理基準に該当するがゆえに、これを解雇したのであつて、申請人等の組合活動を理由に解雇したものではないから、右解雇は、もとより有効である。
(四) 加うるに、申請人等は、いずれも、解雇予告手当並びに退職金を受領しているから、これにより、本件解雇を承認したものというべく、従つて、本件仮処分を申請する理由がない。
(五) なお、申請人等の所属していた前記「組合」は、昭和二十四年十二月一日附を以て、申請人等を除名する旨の決議をなした。しかるに、被申請人会社の就業規則第四十条によれば、従業員組合を除名せられたときは懲戒解雇する旨、規定せられているから、仮に申請人等の従業員たる地位が保全せられても、被申請人会社は直ちにこれを懲戒解雇しなければならず、従つて、地位保全の仮処分を求める必要はない。
第五、当裁判所の判断
協約違反について
有効期間の定めのない労働協約は、協約の存続につき、特別に、当事者の意思の合致がなかつたわけであるから、その存続を欲しない当事者の一方的な意思によつて、これを終了させることができるものと解すべきである。しかるに本件協約については、被申請人会社は、協約が失効したものとして、これが、不遵守を表明し、「組合」も、また、協約が失効したものとして取扱つてきたものであるから、協約の存続を、支える当事者の意思はなく、従つて、前記労働協約は、すでに失効したものといわざるを得ない。従つて、本件労働協約に違反したことを理由に、地位の保全を求める申請人等の申請は失当である。
二 不当労働行為の成否
(一) 申請人等は、本件解雇が、組合活動をしたことを理由に差別待遇をしようとする被申請人会社の意図に基くものであることを主張し、被申請人は本件解雇が正当な事由に基く(整理基準に該当する)ものであることを主張しているがこの点については、
(1) 解雇基準に該当する事実が存在し、それぞれが、解雇を正当づけるに値するものであり、且つそれが解雇の決定的動機であつたか否か。
(2) 申請人等について正当な組合活動をしたことが解雇の決定的原因であつたか否か。(他に解雇原因が存すると否とを問わない。)
という觀点から、不当労働行為の成否を判断すべきである。けだし、(1)の場合には、組合活動をしたことが、解雇の動機の一部となつていても、それを除いた他の原因が十分解雇を理由づけるものであれば、不当労働行為の要件としての差別待遇の意思があつたとはいえないし、又(2)の場合には、たとい解雇基準に該当する事実があつても、これを解雇の原因としたいならば、差別待遇の意思の存することは明かだからである。(不当労働行為の制度が組合活動に参劃した労働者個人の救済を介して、労働基本権そのものを保護しようとするものであることにかんがみ、解雇原因が競合する場合にも、組合活動をしたことが解雇に対する決定的原因であるときは不当労働行為が成立すると解すべきである。)
(二) 考課表について
被申請人会社は、全従業員のうちから被解雇者を選定するについては、従業員の考課表に基き、前記解雇基準に該当するか否かを判定したというのであるから、考課表、(乙第十号証の一ないし二十一)及びその基礎となつている元考課表(乙第二十号証の一ないし二十一)の信ぴよう力が重要な意味をもつ。しかるに元考課表についてみると
(1) その記載は鉛筆書であつて、且つ訂正した箇所が相当あり、その形式に照し十分信用に値するものではない。
(2) しかも同表中、「職場規律」ないし、「職場に於ける重要度」の採点が「戍」であると、他の項目の採点が悪くなくとも、「総評」が「戍」となつている例が数多く見られるが(例えば申請人A、B、C、D、G、J、M、T等)いかに職場秩序を重要視したとはいえ、「職場規律」の成績がただちに総評を決定するというのは理由がなく、又「職場に於ける重要度」というのは、従業員の技術能力その他を考慮にいれた綜合的判断の結果たるべきものであるからその他の項目についての評価が極めて低位でないにもかかわらず、右項目だけが「戍」となつていることは、十分な根拠がない。この点からみると、これらの評価が妥当な根拠に基くものであるか否かが疑わしい。
(3) 序列についてみても、例えば第二職場における序列第四十四位の申請人Iの採点が、第四十五位の申請人Fよりも低位にあると認められること等に徴すれば、序列の妥当性についても疑問が存する。
(三) 整理基準について
(1) 被申請人会社の挙示する解雇基準のうち、(8)(配置転換の困難な者)(9)(業務縮小の為適当の配置なきに至りたる者)(10)(其の他経営効率に寄与する程度の低い者)の三項目は綜合判断の帰結を示すものであつて、それ自体独立して解雇基準となるものではない。
けだし、被申請人の主張、立証を綜合すると(8)、(9)についてもこれに該当するということは、特定の職場において、従業員の定員を減少したため余剰の人員を生ずることとなつたのでそれらのものは、他の職種又は職場に転換し得られない限り、余剰人員として整理されなければならないことを意味していることがわかる。すなわち、(8)(9)に該当するとは、そのものが余剰の人員であるということを前提としている。しかるに企業整備に伴う人員整理とは、経営効率に寄与する程度の低い余剰の人員(これが(8)(9)(10)に該当する)を解雇することにほかならないのであるから、なぜ特定の従業員をかかる余剰人員として解雇しなければならないかという具体的な理由は、(8)(9)(10)によつては、直接に判定し得ないということができる。本来、解雇基準とは、何人がこのような余剰人員であるかを判定、詮衡するための基準たるべきものであるから、本件の場合には、(1)ないし(7)が第一次的な解雇基準であり、(8)(9)(10)は、(1)ないし(7)に該当する事由がある場合に、その従業員を他のものと比較ないし全体の関連において、解雇の要否を綜合的に判断するための基準(むしろ法則)というべきである。(ただし全員が(1)―(7)の基準に該当しない場合には、(10)により、被解雇者を選定することとなるのであろう。)
(2) 「工場秩序を紊す」ことについて
被申請人会社が工場秩序を紊すこと、(解雇基準(3))を重要視し、(3)に該当することが、解雇の重大な原因となつているので、この点について考察する。
一般に組合活動と経営秩序との関係特に、作業時間中の組合活動の限界ということについていえば、抽象的には所定労働時間は使用者の時間であるから、その間の労働は、使用者の経営指揮に服し有機的全体としての経営秩序を組成するから、正当の理由なく、その秩序を紊すごときことは、許されず、従つて、「組合活動は労働時間外に」という原則が妥当するといえるであろう。
しかるに、この原則は、「労働者は、所定労働時間に相当する労働力を契約によつて売渡したものであるから、その労働力の処分権は使用者に属する。」という理論を基礎とするものであるから、この原則が実質的に妥当するためには、「使用者に売渡された労働力に対し、少くとも約束された対価(賃金)が支払われる。」という前提要件が充たされなければならない。かかる觀点から、被申請人会社が経営秩序を紊すと主張する具体的事実についてみると、
(a) 国電スト参加のための職場放棄
労働者は強制労働を強いられることはないが、ひとたび経営活動のうちに組織付けられた以上、正当の事由なくして、ほしいままに作業を中止してもよいということはない。
申請人等が国電スト参加のために早退したことは申請人等の労働条件の維持改善とはほとんど無関係のものであるから、これを目して正当な事由による欠勤とはいいえないが、申請人等が他の従業員に積極的に働きかけて国電ストへの参加を誘い、現実に職場の秩序を紊したとの事実の認められぬ本件においては、一般の事故欠勤と大差がないのであるから、これを解雇の一要素として採り上げるのは失当である。
(職場長の印鑑を出門表に無断でおしたことは明かではないが、右に述べたところに徴すれば、このこと自体は、さしてとがむべきことではない。)
(b) 就業時間中の職場大会デモ(二月十一日、七月三十日)職場離脱、業務執行妨害(八月六日、八月八日)等。
これらの組合活動が行われた時の事情を考察するに、被申請人会社においては、昭和二十三年十一月から、賃金の遅払が始まり、昭和二十四年度に入つてからは、毎月数囘に亘り支払われたが、月々未払を生じ、従業員は、日々の生計に不安を感ずるにいたつたので、(多数の者は、内職によつて生計を補つていた。)賃金の確実な支払を求めるためには大衆行動に訴える以外に適宜の途がなかつたこと及びかかる状態下における会社側からの賃下げの要求に対し反対運動を行う必要があつたことが認められ、且つこれらは、「組合」の決定した職場闘爭の一環として、職場労働者が総意に基いて行われたものであることに徴すれば、これらの行為を違法な行為となすことはできないであろう。
(c) ビラ張り
被申請人会社においてビラ張りを禁止するに際し、特に掲示の場所を設けて、それ以外の場所へのビラ張りを禁止したわけではないからそのやり方は、労働者に対し親切であつたとはいえず、又そのビラ張りが、前記のような労働条件のもとにおいて、申請人等が、労働者の要求を貫徹するために行つたものであることが、認められるから、このビラ張りをとがめることも妥当ではない。
(d) 職場を離れること
右のほか、作業時間中にしばしば職場を離れるということが(2)職務怠慢なる者(4)会社業務に協力せざる者という解雇基準の内容として示されている場合があるが職場委員その他の役員である申請人等が、前記のような賃金遅払の状況下において、被申請人会社をして能う限り速かに賃金を支払わしむべく、組合活動をするため、作業時間中職場を離れても、ことさら生産を阻害する意図の認められぬ限り、それは、全従業員とその家族の生存を維持するため、やむを得ずになされたものというべく、従つて、その職場離脱の責を問うことはできないと解するのが相当である。
従つて、その結果、一般従業員に比較して作業能率が上らなかつたとしても、そのことを捕えて(2)「職務怠慢なる者」に該当するとは、いい難いと解すべきである。(なお、職場委員等、組合活動をしているものには、長時間の作業を要しない仕事が与えられており、その結果、「獲得分数」の計算については、不利益となるように思われる。)
(四) 申請人等の組合活動
申請人等は、K、N、Uを除き、前記給料遅配或いは本件人員整理に関連して会社との交渉にあたり又は、その闘爭に参加して比較的活溌に活躍し、被申請人会社にとつても、その活動が顕著であつたことが認められる。(なお、申請人N、R、Uを除くその余のものは、別表「組合関係」欄記載のとおり組合の役員又は委員の経歴を有していた。)
従つて、申請人K、N、Uについては、不当労働行為の成立することは疑わしいのであつて、結局解雇基準に該当するか否かが問題となる。(解雇基準は、使用者が一方的に定めたときは、就業規則に準ずべきものであり、これに違反した解雇は無効となると解すべきである。)
(五) 申請人A、B、C、E、F、G、H、J、M、Q、Tに対する本件解雇は、不当労働行為として無効である。
(1) 申請人A、B、C、F、G、H、J、Tについては、(3)「工場秩序を紊す者。」(4)「会社業務に協力せざる者。」として、本項(三)(2)(a)ないし(d)に述べた事実の全部又は一部が挙げられているのであるが、それが正当な解雇事由とならないことは、前述のとおりである。
すなわち、右申請人等が
(イ) 「工場秩序を紊す」ということは、別表記載のように、職場大会、デモ等に参加し、国電スト参加のため早退し、又はビラを張つたということであり、
(ロ) 「会社業務に協力しない」とは、さきに述べたような給料遅配状況のもとにおいて職場を離れて組合活動をすることであり、(この点に関し、申請人Cが、検査職場にいた間職場を離れたことは認められず、又、申請人Tが職場を離れたのは、事務職員として、職場従業員のため、配給品の受領分配集金、連絡等にあたり、もしくは、婦人部委員として職場長の許可を得て組合活動をしていたものであることが認められるから、これを解雇基準に該当する事実となすのは不適当である。)
(ハ) 「職務怠慢」というのは、右組合活動のため、相当の技術を有しながら、(申請人A、M、Hについては「技能低位」が解雇事由とされているが、その事実は認められない。)十分に能率を挙げ得なかつたことである。
しかも、これによつて、被申請人会社の生産がいちじるしく阻害されたとはいい難い。
(2) 申請人Eについて
(a) 欠勤は、賃金遅払のため、中風症を患つていた母の医療費にさしつかえ、やむを得ず内職をするためのものであつたと認められる。
(b) 高度の技術を要する映写機、油ポンプの作業に従事していたことに徴すれば、その技能が低位とは考えられない。
(c) 平均以上の生産報奨金を支給されていたところをみると、作業に対し積極性を欠いていたとは認め難い。
(3) 申請人Qについて
(a) 昭和二十四年五月配置(職種)転換により検査職場から第一職場に変つたが、毎月責任分数二〇〇〇分の二倍以上の成績を上げていたことは、被申請人会社の認めるところであり、作業態度がまじめであつたこと、製品に不合格のものがなかつたこと等も認められるから、技術が低位であるとか、会社業務に協力しなかつたとはいい難い。
(b) 六ケ月間の事故欠勤は、六日にすぎないから、他の従業員に比較して、事故欠勤が多いということはできないであろう。加うるに、各職場において、右申請人等より技術低位のもの経験年数の浅いもの、欠勤の多いもの等が、解雇されずに残つていると認められるから、申請人等のすべてが余剰人員であるとは考えられないし、又その配置転換が困難であるとの立証はない。
このように、右申請人等は、いずれも、被申請人の挙示する解雇基準に該当しないのであるが、前記のように、右申請人等が、「組合」の役員、職場委員等として、活溌な組合活動をしていたことを考え併せると、右申請人等に対する本件解雇は、同人等が右組合活動をなしたことを理由とするものと判断せざるを得ないのである。よつて、右解雇は、不当労働行為として無効である。
(六) 申請人D、I、L、O、P、R、Sについては、解雇基準に該当する事実があり、且つそれが、本件解雇の決定的原因であつたと認められる。申請人D、I、L、Pについては、国電スト参加、職場大会、デモ等の責任が問われているが、これはもとより解雇の理由とならないことはいうまでもないが、このことを除外して考察しても、
(a) 申請人O、Pは、技能が劣り、その在社年数も短いのであるから、本件人員整理に際して解雇せられてもやむを得ない。
(b) 申請人Rは、職務遂行に対して熱意を欠き、十分作業能率を挙げ得なかつたものと認められる。
(c) 申請人Sは、事故欠勤遅刻が多く、しかもそれが、気まぐれに行われたことが認められるし、作業意欲なく、又、その技術が、経験年数に比較して低位であつたことも認められる。
(d) 申請人Dは、他の申請人に比較して、その作業成績が低位であることに徴すれば、単に組合活動のために時間をとられたばかりでなく、作業に対する意欲が十分ではなく、又その技能も、経験年数に比して低位にあることがうかがわれる。
(e) 申請人Lは、その職務に対して熱意を欠き、事務処理も緩慢であつて、又その同僚とのあいだに円満を欠いていたことが認められる。
結局、右申請人等については、いずれも解雇基準に該当し、且つ解雇されてもやむを得ない事情があり、これが解雇の決定的原因となつていることが認められるから、右申請人等については、不当労働行為は成立しない。
三 解雇基準の該当、非該当
(1) 申請人Kについては(1)―(7)に該当する事実がなく、結局他のものとの比較において余剰人員として解雇されるということになるのであろうが、被申請人主張のように職場を離れたり、会社業務に協力しなかつたことは認められず、むしろまじめに仕事をしてきたことが見受けられるから、同人が(8)(9)(10)に該当するという理由はないといわざるを得ない。
(2) 申請人Nは、技術があり、実直に勤めてきたことが認められるし、その研磨の結果に欠陥があつたことは認められないから、(2)に該当するとはいえない。
その他(8)(9)(10)に該当する事実も認められない。
(3) 申請人Uは、作業意欲が他のものに優れているものとも認められず、又、体力にとぼしく、作業量も他に劣ると認められるから、(1)(2)に該当し、その結果余剰人員として解雇されてもやむを得ない((8)(9)(10)に該当)というべきである。
このように、申請人Uは、本件解雇基準に該当し、その解雇は有効であるが、申請人K、同Nについては、解雇基準に該当する事実が認められず、従つてその解雇は無効である。
四 退職金等の受領
本件申請人等は、いずれも、解雇予告手当及び退職金を受領しているが、それは本件仮処分申請後のことであり、現に本件仮処分を追行して、解雇を爭う意思が明かであるから、右退職金等の受領により、本件解雇を承認したということはできない。
五 結論
さきに述べたように、申請人A、B、C、E、F、G、H、J、M、Q、Tに対する本件解雇は不当労働行為として、又申請人K、Nに対する本件解雇は、解雇基準に該当しないものとしていずれも無効である。解雇が無効であるにもかかわらず、被解雇者として扱われることは賃金労働者にとつて囘復すべからざる損害であるから、その従業員たる地位を保全するため、前記解雇の意思表示の効力の停止を命ずべきである。
(仮処分の必要の点に関し、被申請人は、申請人等は「組合」から除名せられたから、就業規則により解雇せらるべき旨主張するけれども、仮に除名が有効であつたとしても、他に正当な事由がないにもかかわらず、そのことだけで被除名者を解雇することはクローズド・シヨツプ約款なくして組合への結びつきを強制することとなるから右規則自体無効であり、従つて、右除名の事実は本件仮処分の必要性を阻却する事由とはならない。)
而して、その余の申請人等に対する本件解雇は有効であるから、その無効なことを前提として地位の保全を求める右申請人等の本件仮処分申請は失当として、これを却下すべきである。
よつて主文のとおり決定したしだいである。
(裁判官 柳川真佐夫 古山宏 高島良一)
(別紙)<省略>